intel M.2 無線カードその3 9260NGW / 9560NGW wifi(802.11ac wave2)/Bluetooth5.0

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M.2 無線LANカード intel Wireless-AC 9260NGW/9560NGW


intel Wireless-AC 9260NGW/9560NGW 共通仕様

2017年4Q発売、2018年秋時点での最新鋭インテル無線LANカード。

9260NGW/9560NGWはエンドユーザーから見た場合利用できる機能はほぼ同等です。

802.11ac wave2に対応した無線LAN機能
・送信2・受信2のMU-MIMO、帯域ボンディング160MHz連続による最大1,733Mbpsの転送速度
・5GHz/2.4GHz両対応

最新のBluetooth5.0に対応

9260NGW/9560NGWはこれらをM.2サイズの小型カードにまとめ、M.2(2230)またはM.2(1216)にパッケージしたものです。

対応OS

インテル製無線カードは9260NGW/9560NGWの世代から64bitOSのみの対応となっております。
インテルによる公式サポートOSは

Windows10 x64
Linux カーネル4.14以降
ChromeOS

となります。
Windows版のドライバは旧型製品群と単一のパッケージとなっているため、一見すると32bit版でも動作するように思えますが、実際には32bit版パッケージに9260/9560のドライバは含まれません。

Windows10以前のWindowsOSはすべてサポート外です。ご購入時には十分ご注意願います。
Windows7でご利用になる場合には8260/8265あたりが最終となります。

9260NGWと9560NGWの違い

無線カードは送受信するデータを取り扱う論理層とそれを実際に無線信号化する物理層からなります。

9260NGWや、従来の無線カードでは論理層・物理層ともに無線カード側で実装しています。
9260NGWは汎用の無線カードです。M.2ソケット(Key A/E)を持つPC全般で利用可能です。
CNVi非対応の旧型インテルPCや、AMD製CPUを搭載したPC、さらには変換アダプタを介した汎用のPCIexpressスロットやminiPCIexpressソケットなどでも動作します。

一方、9560NGWでは論理層をPCのチップセット側が担当する仕組み(CNViまたはCNVioと呼ばれます)を持たせたことで無線カード側は物理層だけを担当します。
これにより、搭載可能なPCが同機構を備えたインテル製CPU・チップセットを搭載する製品に限られますが、無線カード側の消費電力や発熱の軽減、回路の大幅な小型化が見込まれます。

9260NGW動作環境

9260NGWはM.2(2230)・Key A/Eに対応したM.2ソケット(PCIexpress及びUSB接続)があればCPUやチップセットに依存しません。
このため、PCIexpressへの変換も可能です。
Bluetooth機能の利用にはUSB配線が実装されている必要があります。

9560NGW動作環境

物理的にはM.2(Key E)互換形状ですが、非対応環境では一切動作も認識もしません
2018年秋時点では利用可能なのは第8世代のCore iシリーズCPU、そして300番台チップセットを組み合わせたPCのみとなります。

Z390
H370
Q370
B360
H310

300番台チップセットでもZ370はCNVi機構を持たないため、Z370では9560NGWは動作しません
Z370機では9260NGWをご利用ください。
Z系チップセットでは近日登場予定のZ390以降での対応となります。

マザーボード上のM.2ソケットでのみ動作するので、USB配線の有無などは特に気にする必要はありません。
マザーボードの仕様を確認し、"CNVi対応"と書かれていれば9560NGW対応といって良いと思います。

M.2ソケットについて

M.2ソケットにはバス幅や通る信号の種類などにより何タイプかあります。
端子部分の切込み(キーと呼ばれます)で識別可能です。
無線M.2カードを取り付ける場合にはPCIexpress x1とUSBが配線されている必要があります。
これは一般的にKey A/Eの2タイプが該当します。

このほかにはNVMeのSSDなどで用いられるKey B/Mなどがあります。
ほとんどの場合、SSD向けのソケットでは2230サイズのカードが取り付けられても無線カードは動作・認識できません。
ご購入前にご利用のPCでKey A/EのM.2ソケットが搭載されているかご確認いただくことをお勧めします。
ご不明な場合はメーカー・型番などをお知らせくださればこちらでお調べすることも出来ます。

■vPro

9260NGWではvPro対応の可否は別製品として型番が異なる製品が提供されています。
当店取扱品は基本的にvProには対応していないバージョンです(お取り扱いは可能です)。

9560NGWでは搭載PCがvPro対応Core iプロセッサ搭載かつチップセットマザーボードがvPro対応製品の場合、専用版を用いなくてもvProが利用可能なようです。
ただし、現時点で当店ではこの点について検証できませんため、ご購入者様でご確認の上購入検討の参考としてください


802.11ac wave2における1,733Mbpsの実現

802.11acではざっくり要約すると使用する帯域の拡大とアンテナ本数を増やすことの組み合わせで転送速度を向上させます。
帯域幅は従来20MHzが標準で、802.11nで倍幅として40MHz動作が定義されました。
802.11ac wave2では最大160MHzまでの拡張が仕様化され、帯域幅とその束ね方、アンテナ本数の組み合わせは任意で設計できるようになりました。

このため、実際の製品としては「最大1,733Mbpsの802.11ac wave2」を謳う製品でもintelQualcomm Athelosなどのアンテナ2系統と160MHzの連続した帯域により最大1,733Mbpsを実現するもの、Broadcomなどのアンテナ4系統と80MHzの帯域を使う実装で製品化したものなどが混在することとなりました。

無線LANルータのコントローラとしては国内製品ではBroadcomが大きなシェアを持っているため、国内で発売中の802.11ac wave2親機はほとんどが後者の方式を採用しています。

実際の転送時には接続する機器間で同一の組み合わせと方式を採用している必要があります。

なお、802.11ac wave2ではさらに160MHz・アンテナ4x4の製品なども実装可能なため、将来的にはそうした製品が登場する可能性もあります。
ただし、帯域は有限であり、近隣で同じ5GHz帯を使う無線局が多くなれば当然そうした局との混信(≒帯域の奪い合い)が発生してデータの再送などが頻発するなどし、速度が低下することになります。
現実的には802.11axなどの後続規格の普及が躓かない限りは当面は9260NGW/9560NGWで対応可能と思われます。

周波数帯域の拡大(チャンネルボンディング)

複数チャンネルを束ねて周波数幅を広げる技術をチャンネルボンディングといい、802.11nでは最大で40MHz幅だったものを802.11acで80MHzに、802.11ac wave2ではさらに最大160MHzに拡大されました。
802.11ac wave2での帯域確保に際しては160MHzを連続した帯域として要求する実装と、5.2GHz帯で認められた範囲内の任意の80MHzをふたつ束ねる実装があります。
現在のインテル製品では連続した160MHzでの動作のみをサポートしています。


アンテナ・MU-MIMO

802.11n以降、複数のアンテナを使って通信を高速化するMIMO機構がサポートされています。
アンテナ本数は2本ないし4本が一般的ですが、802.11acではより多くすることも可能です。
ただし、4本(4x4)の実際の対応製品は無線ルータ側のみで、PC向けとしては製品化されていません。このため、一般的には4x4は無線ルータ同士のメッシュ接続に利用されています。
インテル製品では2本で送受信両方を行う2x2と呼ばれる方式を採用しています。

さらに802.11ac以降ではMU-MIMO(マルチユーザーMIMO)対応となり、同時接続数が多くなっても速度低下を起こしづらくなっています。

チャンネルボンディング、MIMOは道路の車線数が増えたところを想像してください。

ビームフォーミング

通常、無線基地局は電波を全方位へ均等に放射します。
ビームフォーミングは対応端末に向けて電波を集中的に送信することで接続性と実効速度の向上を図るものです。
MU-MIMOと組み合わせることで位相をずらして電波干渉を起きづらくさせる空間多重通信が可能になり、複数台の子機がひとつの親機に接続しているときの同時通信性能を改善しています。

なお、従来のMIMO(シングルユーザーMIMOとも呼ばれます)は時分割多重通信であり、実際に同時に接続して通信が行われるのは時間あたり1台のみでした。
※時分割多重:ミリ秒、マイクロ秒単位などで通信を小分けにして順次通信する方式。

その他の高速化技術

変調方式の多値化
802.11nでは6bit(64QAM)でしたが802.11acでは8bit(256QAM)となり、1信号単位での情報密度が向上しています。
フレームの多重化
802.11nと比べてフレームサイズが16倍に拡大されたことで一度に転送できるパケットが増えています。
これにより、データ送信・応答確認にかかる待ち時間が大幅に短縮されます。

これらはトラックの荷台が大きくなったところを想像するとイメージしやすいかと思います。

■9260NGW/9560NGWでの実装

本製品(9260NGW/9560NGW)で1,733Mbpsを実現するためには”HT160、2x2”に対応した無線親機が必要となります。これは連続した160MHzの帯域、送受信アンテナ各2を意味します。

前述のとおり、2018年夏時点では国産の無線ルーターの多くは連続80MHz、送受信アンテナ各4により1,733Mbpsを実現するものがほとんどです。
こうした機種との接続では80MHz・アンテナ各2として接続することとなりますので、速度は半分の866Mbpsでキャップがかかります。

日本国内で入手可能なHT160・2x2での接続が可能な無線ルーターとしてはネットギア合同会社製R7800などがあります。
当店での動作確認も基本的にはこちらを使用して行っております。

802.11a/b/g/n/acへの後方互換あり
こうした親機以外に、従来の802.11a/b/g/n/ac親機との接続も可能です。
その場合転送速度や暗号、認証はそれぞれの親機の性能に制約を受けます。
これらの旧規格についてはそれぞれの資料をご参照ください。

Wi-Fiに関する注意点
WiFi DirectはWindows使用時のみ利用可能です。Linux、ChromeOSでは利用できません。
9560には9560D2WLという型番でLTEモデムを内包する製品がありますが、当店でのお取り扱いはありません。
このため、当店取扱の9560NGWにおいてはWi-Fi/Bluetooth and LTE Coexistense Supportもありません。

■Bluetooth5.0

Bluetooth LowEnergy(最大2Mbps)・BluetoothSmart(旧称)などに対応。

・Bluetooth5.0とはBluetooth4.0のLowEnergy(LE)モードを拡張したほか、LE接続時の速度を最大2Gbpsに向上させたモードを追加したものです。
・9260NGW/9560NGWは製品としてBluetooth3.0+HS(最大24Mbps)/2.1+EDR(最大3Mbps)、Bluetooth4.0を含む従来の規格に後方互換があります。

Bluetooth4.0は3.0までの高速化指向から方針を転換し、省電力性能を向上させたBluetooth LowEnergy(BLE)と呼ばれる機構が規格化されたもので、Bluetooth3.0以前の規格とは互換性がありません。

このため、Bluetooth4.0実装時には通常Bluetooth3.0(2.1以前の仕様を内包します)と併せて実装するのが一般的です。
9260NGW/9560NGWでも同様にBluetooth3.0とBluetooth5.0を両実装しており、従来製品との互換性を確保しています。

なお、オーディオ機器の接続にBluetoothを用いる場合、ほとんどの製品でBluetooth2.1+EDRでの接続となるため、実のところ9260NGW/9560NGWを用いてもプロトコル的には特に利点はありません。
現在十分安定動作している場合にはBluetoothの音質向上を目的に本製品を購入する必要はありません。

ただし、Bluetooth4.0で定義されたBatteryProfileが利用可能になるため、現在のPCのBluetooth機能が3.0以前のみ対応の場合は本製品への更新で接続対象のバッテリ残量が参照可能になるかもしれません(接続対象もBLEに対応している、かつOSもBatteryProfileに対応している必要があります)。

続きます。