富士通 PRIMERGY TX1330M2 その15・TX1310系とどれ選ぶべき?

富士通 PRIMERGY TX1330M2 その15・TX1310系とどれ選ぶべき?

このところ一部でPRIMERGYの特価品が続いていて、TX1330M2だけでなくTX1310系列も大幅に安く売られています。どれを選ぶのがベストでしょうか。
それぞれの特長、欠点(というか設計思想やターゲット層の違い)を見ていきます。

TX1330M2

イメージ 1
(from fujitsu.com)


Xeon E3 v5世代。これまでの「激安サーバー」といえば流通チャネル違いのコンシューマー向けPC、といった程度の製品がほとんどでしたが、本機は本格的な遠隔管理機能を標準で備え、二重化対応の80Plusプラチナ電源ホットスワップ対応のストレージベイなどきちんとした24時間稼働の業務用としても耐えうる装備をもっています。
M3の登場でわずか1年で型落ち扱いになってしまいましたが、DDR4(PC4-2133)ECCメモリ対応、Skylake系CPU対応と十分一線で戦える機種です。外部ベイは5.25インチ*3(うち1はDVD-ROMドライブで占有済み)。
一方で動作音は実測約34dBと夜中寝室で動かしておくにはちょっと気になるかもしれません。
ファン制御を自動にしておけばまあまあ許容範囲かと思いますが、冷却系の管理を停止してフルで回すともう「俺、今なら空も飛べるかもしらん…」とか思ってそうな動作音です。夜中に何かのはずみで全開になったら飛び起きる自信ある。

ストレージへの接続はSFF-8643でまとめられたSAS及びSATA対応ポートが4、7ピンのSATAが2。3.5インチベイ用のキャディは基本的には添付されておらず、販売店が別途サービス品としてつけている場合以外は少々入手に苦労するかもしれません。
富士通による営業活動は終了しており、後継のTX1330M3はXeonE3 v6対応となり発売中。
TX1330M3はマザーボードの枝番が違う、BIOSがちょっと違う以外はM2とほとんど同じものですがメモリがPC4-2400対応に、CPUがKabylake世代に切り替わっています。本ブログの記事の大半はM3でも参考になるはずです。
CPU Skylake系
拡張スロット PCIe3.0 x8(x8) *2 PCIe3.0 x1(x4) *1 PCIe3.0 x4(x8) *1
※カッコ内は物理形状。x1スロット以外はエッジフリー
メモリ DDR4(PC4-2133) *4 最大64GB ECC対応
HDD搭載数 3.5インチ*4 ホットスワップ対応ベイ
(または3.5インチ*8ないし*12、2.5インチ*8ないし*16、*24)
 ※メーカー出荷時SASコントローラ・エキスパンダと合わせオプション
動作音 約34dB
電源容量 450W(80PlusPlatinum)*最大2、または300W(80PlusGold)*1
電源冗長化 対応
映像出力 D-SUBミニ15ピンアナログRGB
外形寸法/重量 177*535 [560 (突起部含む)]*455 mm (WDH)/ 最大23 kg 
5インチベイ向けには4ピンペリフェラル端子が2系統。そのほかSATAバックプレーン側には専用形状のラッチ付き電源出力端子などが用意されており、LTOドライブ、追加の光学ドライブなどを、富士通純正パーツで固める分には作業性は良好です。4ピンペリフェラル端子のようにやたら固かったり、SATA電源のようにやたら華奢だったりしないのは安心感があります。自前で手配しようとするとなかなか入手困難だったり、デバイス側は結局汎用品なのでやっぱりSAS/SATA電源だったりはしますが。

本機はSkylake系CPU搭載の上、PS/2ポートを持ちません。このためWindows7/8/8.1などの旧OSをインストールするには予めXHCIドライバを組み込んだインストールメディアを用意するか、別の環境でOSインストールを行う必要があります。実質的にWindows10かLinux、なんならvmWAREで使うことになるでしょう。
(FreeBSDはServerViewモジュールもなく、保証外動作確認リストからも外れています)

なおストレージ周りの搭載量とラックマウント対応の都合上、MicroATXサイズのマザーを搭載している割にでかいです。デスクトップ設置というよりはデスク下設置のほうが良いでしょう。

TX1310M1

イメージ 2
(from fujitsu.com)


Xeon E3 v3世代でほかの二機種と比べ多少見落とりしますが、2017年10月下旬時点で13,000円前後と抜群の低価格っぷりを見せています。コンパクトなMicroATX筐体と実測約26dB24dBほどと小さな動作音が特長です。
(2017年10月29日午後・動作音修正)
メモリはDDR3(PC3L-12800)ECC。ストレージベイはホットスワップには対応しませんが4台分のキャディが標準添付されており、追加コストが不要です。ハードディスク周りをダイレクトに冷やせる位置に120mmファンが配置され、冷却性能は多分一番良好。
外部ベイは3.5インチ*2、5.25インチ*2(うち1はDVD-ROMドライブで占有済み)。
ストレージへの接続は7ピンSATAが6。メインメモリはECCなしの一般的なDDR3/DDR3Lモジュールも動作します。
電源ユニットは冗長化なしの250W。世代の古さから、ほかの2製品と比べるとバス周りの弱さが目立ちます。
CPU Haswell系
拡張スロット PCIe3.0 x8(x8) *2 PCIe2.0 x1(x4) *1 PCIe2.0 x4(x8) *1
※カッコ内は物理形状。
メモリ DDR3L(PC3L-1600)*4 最大32GB ECC対応
HDD搭載数 3.5インチ*4
動作音 約24dB
電源容量 250W
電源冗長化 非対応
映像出力 D-SUBミニ15ピンアナログRGB
外形寸法/重量 175*419*395 mm (WDH)/ 最大14kg
ストレージ周りの電源ケーブルはだいたい位置に合わせた長さで用意され、ブラブラと遊んでしまうことがありません。このあたりは、もう少し汎用品に近いパーツで構成されることの多いNECのExpress5800/S70系列との違いですね。

一方でCPUが古めということは旧世代OSの動作も可能ということ。Windows7などを使う用途には本機が新品で手に入るうちに買っておくべきかもしれません。

TX1310M3

イメージ 3

(from fujitsu.com)


XeonE3 v6世代。TX1310M1から更に奥行が10cmほど短くなり、313mmとフルサイズの拡張カードが利用可能なPCサーバーとしては屈指のコンパクトさを誇ります。一方で動作音は実測約26dBと、TX1310M1からは大雑把に1.3~1.4倍ほど大きくなっています。※3dB増えるごとにおおよそ2倍の音量になります。図書館の暗騒音がだいたい30dBといわれており、本機の約26dBというのは気にするほどの騒音ではないでしょう。

ストレージベイはホットスワップ非対応・ケーブル交換不可能な内蔵ベイ(SATA*4)で、TX1310M1と同様キャディは4台分標準添付。Windows以外のOSからRAID機能を使うのは現時点では少々難しいようです。
メインメモリはDDR4(PC4-2400)でこの三機種の中ではもっとも高速です。外部ベイは5.25インチハーフハイト*1、薄型光学ドライブ専用ベイ*1。
PCIe拡張スロットがx16対応に、オンボードの映像出力がアナログRGBを廃しDisplayPortになったのもトピックのひとつ。ビデオカードの取付であれこれ気にする必要がなくなったうえ、なんならオンボードのみでもデジタル映像出力と音声出力が得られるようになったことで無改造でも十分普段使い用PCとして使えるようになりました。
CPU Kabylake系
拡張スロット PCIe3.0 x16(x16) *1 PCIe3.0 x4(x16) *1 PCIe3.0 x1(x4) *2
メモリ DDR4(PC4-2400)*4 最大64GB ECC対応
HDD搭載数 3.5インチ*4
動作音 約26dB
電源容量 250W
電源冗長化 非対応
映像出力 DisplayPort
外形寸法/重量 180*313*374 mm (WDH)/ 最大12kg
TX1310/TX100S3などから筐体が一新され大幅に小型化。同時にストレージ周りの配線が見直され、ホットスワップこそ非対応ながらキャディに取り付けてベイに押し込むだけで搭載・接続できるようになりました。
見た目にもすっきりしますし3.5インチSATAHDDだけ使う分には良い変更だと思います。

本機とTX1330M3はKabylake搭載のため、Windows10以前のOSではintelによるCPU・チップセットのサポートがありません。コンシューマ向けOSとしてはWindows10かLinuxを使うことになります。
(FreeBSDなんてもう保証外動作確認OSリストからさえ外れてますし…)

TX1310M3に関してはOTTOServer TECH Blog (ottoserver.com)さんに豊富な画像つきでレビューがあります。
そちらも参照されることをお勧めします。


一般的な自作PC向けパーツと富士通PRIMERGY TXシリーズの違い

電源ユニットが富士通専用設計の12V単一電源です。
一般的なATX電源ではPSU側で12V・5V・3.3Vなどを生成しているため24ピン+8ピンとやたら配線がごつくなっていますが、PRIMERGYでは12V単一で供給しているため(5V.3.3Vはマザーボード・バックプレーン側で12Vから生成)、配線が16ピン1本のみとシンプルになっています。
筐体内がすっきりすることで冷却性能なども改善されますが、故障時に汎用品を買ってきて交換、というわけにはいきません。
物理的な形状も独自仕様であり、交換・予備部品の手配は富士通に直接依頼するか、専門店、ネットオークションなどに頼ることになります。
まあ今の値段なら予備買っておけば済むことですけど。

メインメモリ
基本的にエラー訂正機能(ECC)のあるモジュールを使い、コンシューマ向けのNon-ECCモジュールは使いません。動作する場合もありますが、ECCつき含め社外モジュールを搭載するとメーカー保証がなくなります。
現行機種でどういう扱いをしているかは未確認ですが、TX100S3あたりではメモリモジュールのSPD情報を見てホワイトリストにない製品についてエラーを出していました。
一方で上位サーバーのように大容量のメモリを搭載する必要がない本シリーズではUnbufferedタイプのモジュールのみの対応となり、Registered、LRDIMMなどの高信頼性大容量モジュールは利用できません。

今回の三機種ではTX1330M2(及び同M3)、TX1310M3はDDR4(PC4-2400) Unbuffered ECC(EUDIMM)を、TX1310M1、TX100S3(及び同S3p)ではDDR3L(PC3L-1600) Unbuffered ECC(EUDIMM)を用意すればまず間違いありません。PC4-2133/2400とPC3/PC3-1333/1600はそれぞれほぼ価格差はなく、ほとんどモジュールは1段階低い設定の動作プロファイルにも対応しています。
わざわざ低いグレードのものを選ぶ理由はあまりありません。
拡張スロット
フルハイトのPCIeスロットを持ち、一般的なPCIe拡張カードが利用可能です。
一部機種ではスロット末端が開放型(エッジフリー)のソケットを採用しており、そうした製品では上位のバス幅の拡張カードを搭載スロットの信号数の範囲で利用可能なことがあります(カード側の実装にも依存します)。
例えばx16のカードをx8のスロットで動作させた場合、x8で動作します。


総評

じゃあどれ買えばいいのよ、という話ですが、用途などでも変わりますが個人的にはワークステーション的に卓上で使うならTX1310M3、色々と走らせるサーバーとしてなら小物を買い足す予算に問題がなければTX1330M2です。

TX1310M3はメモリ帯域・バス幅、動作音、設置スペースを問わないコンパクトさと、これ買っておけば十分じゃね?感の高さというかなんというか。映像出力がDisplayPortになったのもメリットのひとつ。普段使い用に新調するならビデオカード買わずに済みますので差額は多少圧縮されるかと。

TX1330M2、特に2017年10月下旬時点で流通量の豊富なPYT1332TNMは「偶数台買ってニコイチしてこそ華」の機種です。現在の2万円前後という価格であれば高騰気味のDDR4ECCメモリ(しかも富士通純正)と電源ユニットの予備というか多重化、ついでにSASバックプレーンやケーブルの値段だと思えばほかはオマケと言っても過言ではないかと。余ったPentium G4400はネットオークションに出してもマイニングリグPCを作成する方などがさくっと買ってくれるかと思います。
ニコイチ状態のTX1330M2は3.5インチ8ベイ、電源二重化、低価格サーバーには滅多にない管理機能(※)等々を備えたPCとしてはむしろ圧倒的にC/P比に秀でた部類になります。
(※hp microserverなどオプションで用意されてる製品はあります)

TX1310M1に関してはNon-ECCメモリの使いまわしが出来る、ドライブキャディが標準添付など部品のストックがある場合に使いつぶす機種としては十分アリだと思います。2017年10月下旬時点の1万3千円弱という価格はECCメモリと電源ユニットの予備の値段だと思えばほかはオマケと言っても過言ではないかと(その2)。

その他、旧製品としてTX100S3/同S3pなどももし誰かがくれるというなら喜んでもらって問題ない製品です。
もっともさすがに年季が入りすぎてて稼働していた中古をお金払って買うのはどうなの?とは思います。Non-ECC使えませんしね。
ただ、Xeon E3 v2や第2・第3世代 Core iは中古も大概安くなってますし、ECCつきDDR3とそういうのが手に入る(or手元にある)ようなら下手に最新世代のローエンドCPU機買うよりもCPUパワーゴリ押しには良いかも。

結論

まあつまり好きなPRIMERGYを買え、というお話です。なんならCELSIUSも良いですけどね。


(2017年10月29日・追記)
なんだか話がとっ散らかっていたので総評のあたりを書き足し。
あれこれ書いてますが個人的にはTX1330M2を大変気に入っています(今手元に9台)。
旧OS保守分以外は全部これに置き換えようかと思っているレベル。

個人的にはECCは必須と考えていて、nonECCのメモリが使えるという部分にはあまり価値を観ていません。
実際ECCが機能するなんて滅多に起きないことなので「じゃあ削って値段下げろ」となりがちなのもわかるんですけどね。
nonECCで構わなければH110とPentium G4600あたりで自作したほうが諸々の取り回しが簡単です。起動も圧倒的に速いし、M.2NVMe等の高速SSDもそのままで(一応)使えるし。
そうでなくこの手のサーバー機のセール品に手を出すのは24時間365日稼動させっぱなしにしておく上で多少なりとも信頼性を求めたいから。

今回のTX1330M2はそうしたあたりでわたしにはドンピシャだったのです。

ちなみにこれまでわたしが使ってきたここ最近?の安サーバーはこんな感じ。

富士通 PRIMERGY TX100S3  4台 現役 Xeon E3-1260L
PRIMERGY TX100S3p 4台 現役 Xeon E3-1230V2
PRIMERGY TX1310M1 3台 現役 Pentium G3420(なんかPentiumで十分だよねの草分け)
NEC Express5800/S70無印 1台 あまりに不安定で交換してもらうも結局すぐお蔵入り
Express5800/110Gd 6台 FDD接続出来るので筐体を組み替えて現役
Express5800/GT110b 4台 Core i7-870 SASHBAのファーム更新用に復帰中
Express5800/S70SD 4台 ECC・付属キーボード以外退役済
Express5800/S70RB 4台 ECC・現役 Pentium G6950→Core i3-530
Express5800/S70PJ 2台 ECC・予備役
hp Proliant ML115G1 4台 何故か友人達に大人気で全部もらわれていった
Proliant ML115G5 4台 なぜかこっちはあまり人気なかった
Proliant ML110G5 4台 Core2Quad Q9550を載せてマザーボードだけ残してある。

全部の購入金額まとめたらまともなの買えるでしょとかは言わないお約束。時期もずれてますしね。
安くないところだとSun MicrosystemsのFireシリーズとかhpのラックマウント、ブレードサーバー、SuperMicroのラックマウント等々。うるさかったです。あのへんのと比べたらTX1330M2なんて天国のような静けさ。

おまけで原稿やったり遊んだり用のはこんな感じ↓です。